【お心に沿う御法衣】鈴木法衣店お誂え事例 ー 祈りの桜染褊衫 ー
鈴木法衣店は、お客様お一人おひとりの想いに向き合い、お客様のご要望を伺い、それを御法衣というかたちに昇華させることが使命であると考えております。お客様のご要望に真摯に向き合うことは、私たちにとって何よりの喜びであり、学びであり、歩みの原動力です。
これからもお客様との良いご縁が繋がることを願い、この連続コラム「お心に沿う御法衣 鈴木法衣店お誂え事例集」にて、お客様のご希望に沿ってお仕立てさせて頂きました13点のお誂え品をご紹介いたします。
こちらのコラムでは、神戸市 須磨寺様からご相談を頂戴しお仕立てしました、「祈りの桜染褊衫」をご紹介いたします。
「想いを紡ぎ、祈りを染めて──森羅万象の美しき桜染褊衫」
祈りの桜染褊衫
お誂え品に込められたお客様の想いと、弊社のご提案
奈良国立博物館主任研究員 三田覚之先生ご監修のもとで製作される【令和の糞掃衣プロジェクト】がございました。「その糞掃衣に合う褊衫を作りたいのですが、どのような褊衫が良いですか」とお客様からご相談を頂きました。
元々は山口県平生町にあります般若寺ご住職様であった福嶋弘昭和尚様が始められたプロジェクトでしたが、突然のご病気でご遷化され、法弟である須磨寺様の小池陽人寺務長様がその志を引継ぐこととなったそうです。福嶋和尚様の想いを引き継ぎ、糞掃衣プロジェクトへ一針一仏に携わる皆様の想いを感じ触れながらそれをかたちに出来る褊衫を、というのがお客様の大切にされていたことでした。
祈りや想いをかたちに出来るようにとご提案した内容は、須磨寺様境内の梅の木で染めること、そして水は五大元素の一つであることにも着想を得て、般若寺様の龍神池と須磨寺様に湧く御水を染めの仕上げに融合させること。
そのご提案をしたところ「境内に枯れて伐採せざるを得ない可哀想な敦盛桜がある。その桜で染められないか」とのお声を頂き、梅染めから桜染めへと変更いたしました。
その後、染め屋さんにも直接ご相談しながら多くの方のご協力のもとで実現したお誂えでした。
この敦盛桜は、地・太陽・風・空・水、そして多くの人々の想いを受け継ぎ生きてきたのだと思います。歴史を知り花を咲かせ、人の心を癒してくれたに違いありません。染料とすることで、枯れて終わるはずだったその命に、再び息吹を吹き込められたように感じています。
後に小池寺務長様からお聞きしたところによると、故福嶋和尚様は龍神池をとても大切にされていたそうです。そして須磨寺様に湧く御水は、かつての阪神淡路大震災で人々を助けた命の御水だったのだそうです。
これらの御水の融合は祈りの融合であったのではないかと感じています。
草木染は色が変化してゆくのが特徴のひとつです。
それは「劣化」ではなく、移ろいゆく「美化」なのではないでしょうか。
今、小池寺務長様はプロジェクトで一針一仏された糞掃衣を纏い、御法話や御法要はじめ様々な場で桜染褊衫をご着用されています。その褊衫のお誂えに携わらせて頂けましたことを、心より感謝しております。
すずきのお誂え後期
想いを継ぎ、場と記憶を染め上げる、象徴としての御衣のお仕立てをお手伝いします。
お仕立てギャラリー
糞掃衣とともにご着用頂いたご様子
制作過程に用いた資料や織工程
境内の桜を用いた草木染と、両寺院の御水を融合した象徴的な染で祈りを形にしました。
その他のお誂え事例
この連続コラム「お心に沿う御法衣 鈴木法衣店お誂え事例集」では、このほかにも様々な想いのこもったお客様からのご依頼品、お誂え品をご紹介させて頂きます。
それぞれのお仕立て事例の詳しいお話は、順次、特別コラムにてご紹介させて頂きます。既に公開済みのコラムは、商品名をクリックするとコラムページに遷移します。ぜひご覧ください。
<お誂え品>※お仕立て年月順
・白茶本手刺遠山台納戸塩瀬縁三層縫七條袈裟「師の姿を映す──敬仰の念から生まれた一領 」
・明綴別織多宝塔台古代紫ブドウ唐花縁七條袈裟「五大の象徴を織り込んで──信仰・構想・美術・織技が融合した無二の納衣七條」
・自坊で洗える折五條「酷暑に寄り添う──洗える折五條で、夏のご法務を快適に」
・白シルック紗台青磁金紗雨竜鳳凰刺繍入割切「施餓鬼の場にふさわしく──揃いの割切を長く、美しく」
・生平本麻(台鼠、縁千歳茶)九條袈裟「境内の面影を色に託して──支所の心をひとつに結ぶ九條袈裟」
・化繊縦絽 古義半帽子「夏の装いに、快適さと格式を──洗える帽子の素材提案」
・弘法大師御生誕1250年記念七條袈裟「下絵から創作ーーー弘法大師御生誕1250年記念七條」
・冬赤金通唐花(蔓葉部分緑色)輪違五七桐紋白五條「弘法大師生誕1250年を彩る、千葉五号支所様だけの揃い袈裟」
・寺紋+菊三諦章刺繍如法衣 北斗七星デザイン「信念を描く北斗七星──寺紋を纏う如法衣」
・祈りの桜染褊衫「想いを紡ぎ、祈りを染めてーーー森羅万象の美しき桜染褊衫」
<御法衣のリメイク・アップサイクル>
・直綴から座具「二領の直綴を未来へ──志を宿す座具としての再生」
・帯から地蔵袈裟「想いの帯を纏う──家族の記憶を祈りへ昇華した地蔵袈裟」
・御法衣からトレンチコート・紳士ジャケット「祈りを纏い直す──御法衣から生まれ変わるアップサイクルのかたち」
「伝統と革新」展のお知らせ
この度、大本山護国寺様内 月光殿を拝借して「伝統と革新展」を開催します。
この連続コラムでご紹介させて頂きましたお品は、本展における「歩みの間」という、弊社の創業から今日までの歩みの中でお仕立てさせて頂いた逸品の御法衣をご紹介する「間」にて、実物をお客様から大切に拝借し、設えさせて頂きます。
是非お立ち寄り頂き、お客様の想いのこもった品々を、直接ご覧いただけますと幸いです。
「伝統と革新展」概要
1) 日時:2025年 6月26日(木)・27日(金)・28(土)
10時~16時 (28日のみ15時まで)
2) 場所:真言宗豊山派大本山 護國寺様内
月光殿(国指定重要文化財)
■アクセス
【電車】東京メトロ有楽町線「護国寺駅」下車1番出口すぐ
【お車】首都高速5号線「護国寺出口」すぐ
駐車場:①月光殿前(無料)台数に限りがございます ②護国寺様内タイムス駐車場(有料)
3) ご挨拶とプレゼンテーション・・・代表取締役 鈴木貴央より
テーマ:【伝統と革新】
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